肌がベタついているなら保湿は不要?実は乾燥していることも|皮脂と水分は別物なのか科学的に解説

いいえ、肌がベタついていても保湿が不要とは限りません。皮脂量と角層の水分量は別の指標で、皮脂が多くても水分が少ない肌はあり得ます。

ベタつくのに「乾燥している」ことはある?

朝はそうでもないのに、午後になるとTゾーンがテカる。けれど洗顔後はつっぱり、頬や口元はカサつく。そんな状態だと、「皮脂が出ているのだから、乳液やクリームは減らしたほうがよいのでは?」と迷いますよね。

とくに40代は、若い頃と同じスキンケアが急に合わなくなったように感じることがあります。大切なのは、肌表面の「油」と、角層が抱えている「水分」を同じものとして考えないことです。

皮脂と水分は別物?

はい、別の指標です。皮脂は皮脂腺から分泌される脂質で、主に肌表面を覆います。一方、乾燥肌で問題になる「水分」は、主として角層の水分量や、角層から水が逃げにくい状態を指します。

皮膚の水分保持には、角層内の天然保湿因子(NMF)や細胞間脂質などが関わり、角層からの水分蒸散を調節しています。つまり、表面に皮脂があることだけでは、角層が十分にうるおっているかは判断できません。
参考文献
Verdier-Sévrain S, Bonté F. Skin hydration: a review on its molecular mechanisms. J Cosmet Dermatol. 2007;6(2):75-82.

この違いは実測研究でも確認されています。健康なタイ人女性62人を、本人が「脂性肌」と感じる群と「乾燥肌」と感じる群に分け、皮脂量と角層水分量を測定した研究では、脂性肌群の皮脂量は乾燥肌群より1.6~2.1倍高かった一方、角層水分量は脂性肌群のほうが低く、皮脂量と角層水分量には負の相関がみられました。
参考文献
Thadanipon K, Kitsongsermthon J. Comparative study into facial sebum level, pore size, and skin hydration between oily-skinned and dry-skinned Thai women. Skin Res Technol. 2020;26(2):163-168.

この研究はタイ人女性62人という限られた集団の観察研究であり、すべての40代女性にそのまま当てはまるわけではありません。それでも、「皮脂が多い=水分も多い」と単純には言えないことを示す資料の一つです。

ベタついているなら保湿は不要?

不要とは言えません。ベタつきがあっても、洗顔後につっぱる、粉をふく、部分的にカサつく、化粧が浮く、といった乾燥のサインがあるなら、水分保持を助ける保湿は検討する価値があります。

保湿剤は、保湿成分で水分を引き寄せたり、油性成分で水分蒸散を抑えたり、角層のすき間を補うことで、角層の水分状態やバリア機能を支えます。2023年のレビューでも、保湿剤が複数の研究で経皮水分蒸散量(TEWL)を改善し得ることが整理されています。
参考文献
Rajkumar J, Chandan N, Lio P, Shi V. The Skin Barrier and Moisturization: Function, Disruption, and Mechanisms of Repair. Skin Pharmacol Physiol. 2023;36(4):174-185.

「脂っぽい肌に保湿をすると、もっとベタつくのでは?」という心配もありますが、保湿=重いクリームをたっぷり塗ることではありません。皮脂が気になる人では、軽い使用感の保湿剤を選び、必要量を薄く使うという調整ができます。

実際、皮脂過多の90人を対象にした4週間の無作為化試験では、グリセリンとジメチコンを基剤とする保湿クリームに皮脂対策成分を加えた3群すべてで、皮脂量が有意に低下し、同時に皮膚水分状態などの客観指標も改善しました。これは「保湿すると必ず皮脂が増える」という考えとは一致しません。
参考文献
Detudom P, Kamanamool N, Paichitrojjana A, Udompataikul P, Udompataikul M. Efficacy of anti-sebum moisturizing cream containing 2% l-carnitine and 5% epigallocatechin gallate in seborrhea: A randomized clinical trial. J Cosmet Dermatol. 2023;22(11):3058-3064.

ただし、この試験は特定の処方を使った研究です。すべての保湿剤が同じ結果になるわけではなく、製品の処方や肌質によって使用感は変わります。

「乾燥すると皮脂が増える」は本当?

「肌が乾燥すると、それを補おうとして皮脂が過剰に出る」という説明は、美容情報でよく見かけます。しかし、一般の40代女性において「角層が乾燥したことが原因で皮脂腺が反応し、皮脂分泌が増える」という因果関係は、現時点で強く確立された一般則とは言いにくいです。

皮脂量は、年齢、性別、ホルモン、部位、気温や湿度、洗浄方法など複数の要因の影響を受けます。そのため、「ベタつき=乾燥の反動」と決めつけると、本当は皮脂分泌が多い肌、洗いすぎで刺激を受けている肌、部位によって乾燥と皮脂が混在している肌などを同じものとして扱ってしまいます。

年齢との関係を調べた研究では、18~80歳の健康な女性150人で皮脂量・角層水分量・TEWLなどを測定したところ、皮脂産生は年齢とともに有意に低下しましたが、角層水分量やTEWLの年齢との相関は小さいという結果でした。皮脂と水分状態は、加齢に対しても同じ動きをするわけではありません。
参考文献
Luebberding S, Krueger N, Kerscher M. Age-related changes in skin barrier function – quantitative evaluation of 150 female subjects. Int J Cosmet Sci. 2013;35(2):183-190.

40代の肌ではどう考える?

40代のスキンケアでは、「顔全体を脂性肌か乾燥肌かの二択で決める」より、部位と症状を分けて見るほうが現実的です。額や鼻はベタつくのに、頬や口元は乾燥するという混在は珍しくありません。

また、角層水分量は測定部位によって差が大きいことが、健康な成人を対象とした2022年の系統的レビュー・メタ解析でも示されています。19研究を統合した解析では、顔の中でも部位により水分量が異なっていました。
参考文献
Samadi A, Yazdanparast T, Shamsipour M, Hassanzadeh H, Hashemi Orimi M, Firooz R, et al. Stratum corneum hydration in healthy adult humans according to the skin area, age and sex: a systematic review and meta-analysis. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2022;36(10):1713-1721.

そのため、Tゾーンの皮脂だけを見て「顔全体の保湿をやめる」のではなく、頬・口元など乾燥しやすい部分はしっかり、ベタつきやすい部分は薄く、と塗布量を調整する方法が取り入れやすいでしょう。

どんな保湿をするとよい?

まずは、皮脂を取り切ることより「洗いすぎないこと」と「角層の水分を保つこと」を優先します。ベタつきが気になる場合でも、次のように使用感を調整できます。

  • 洗顔は強くこすらず、洗浄力の強い製品を何度も使うことを避ける。
  • 洗顔後、肌がつっぱる前に保湿する。
  • グリセリンなどの保湿成分を含むローションやジェル、乳液など、軽い使用感のものから試す。
  • 頬・口元は十分に、額・鼻は少量にするなど、部位ごとに塗る量を変える。
  • ニキビができやすい場合は「ノンコメドジェニックテスト済み」などの表示も参考にする。

保湿剤の役割は、単に「油を足す」ことではありません。保湿剤には、水分を引き寄せるヒューメクタント、皮膚表面からの水分蒸散を抑えるオクルーシブ、角層をなめらかにするエモリエントなどがあり、処方全体で水分保持を支えます。
参考文献
Draelos ZD. The science behind skin care: Moisturizers. J Cosmet Dermatol. 2018;17(2):138-144.

保湿してもベタつくときはどうする?

保湿後のベタつきが強い場合は、「保湿そのものをやめる」のではなく、製品の質感や塗る量を見直してみてください。クリームから乳液やジェルに変える、Tゾーンだけ量を減らす、朝と夜で使い分ける、といった調整ができます。

赤み、強いかゆみ、ヒリつき、皮むけ、繰り返すニキビなどが続く場合は、乾燥肌だけではなく皮膚炎やニキビなど別の状態が関係していることもあります。自己判断で保湿を増減し続けるより、皮膚科で相談するほうが安全です。

ツバメの巣は乾燥肌とどう関係する?

ツバメの巣(Edible Bird’s Nest:EBN)は、アナツバメ類がつくる巣を食品として利用するものです。近年、皮膚の水分やシワに関するヒト試験も報告されていますが、研究結果は一方向ではありません。

2026年にJournal of Functional Foodsで報告された無作為化比較試験では、25~50歳の健康な成人70人を対照群とツバメの巣群に分け、69人が90日間の試験を完了しました。ツバメの巣群では、30日・90日時点の角層水分量がベースラインおよび対照群より有意に高く、90日ではベースラインから26.19%増加したと報告されています。研究者による評価は盲検化されていましたが、食品の性状上、参加者本人は盲検化されていません。
参考文献
Zhang W, Wang D, Zhang Y, Wang X, Chen Y, Chen L, et al. Dietary edible bird’s nest improves skin hydration by upregulating EGFR-AQP5 pathway. J Funct Foods. 2026;140:107266.

一方、2022年の二重盲検プラセボ対照試験では、40~60歳の女性86人を1対1に割り付け、ツバメの巣抽出物100mgまたはプラセボを12週間摂取しました。シワ指標の一部には群間差が認められましたが、皮膚水分量についてはツバメの巣群とプラセボ群の間に統計学的な有意差はありませんでした。
参考文献
Kim HM, Lee YM, Kim EH, Eun SW, Sung HK, Ko H, et al. Anti-Wrinkle Efficacy of Edible Bird’s Nest Extract: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Comparative Study. Front Pharmacol. 2022;13:843469.

したがって、現段階では「ツバメの巣を食べれば乾燥肌が改善する」と断定するのは適切ではありません。ヒト研究は増えていますが、摂取量・加工方法・対象者・評価方法が異なり、再現性の確認も必要です。スキンケアの基本は、まず洗浄と保湿、紫外線対策などです。ツバメの巣は、それらを置き換えるものではなく、食生活の中で検討する補助的な選択肢として捉えるのが妥当です。

なお、1987年の基礎研究では、ツバメの巣抽出物からEGF(上皮成長因子)に似た活性が検出され、培養した3T3線維芽細胞のDNA合成指標を刺激したと報告されています。ただし、これは試験管内の基礎研究であり、ツバメの巣を食べたときに同じ作用が人の皮膚で起こることを直接示すものではありません。
参考文献
Kong YC, Keung WM, Yip TT, Ko KM, Tsao SW, Ng MH. Evidence that epidermal growth factor is present in swiftlet’s (Collocalia) nest. Comp Biochem Physiol B. 1987;87(2):221-226.

ツバメの巣ゼリーを選択肢にする?

乾燥対策の基本を続けたうえで、ツバメの巣を日々の美容習慣に取り入れてみたい方は、食品として無理なく続けられる形を選ぶ方法があります。研究で使われたツバメの巣製品と市販品は同一ではないため、研究結果をそのまま個別商品の効果として受け取らないことも大切です。

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結論は?

肌がベタついていても、保湿が不要とは限りません。皮脂量と角層の水分量は別の指標であり、皮脂が多い肌でも水分量が少ない場合があります。反対に、「乾燥したから皮脂が増えた」と一律に決めつけるのも適切ではありません。

40代の肌は、Tゾーンと頬で状態が違うこともあります。顔全体を一つの肌質として扱わず、洗顔後のつっぱり、カサつき、皮脂の出方を部位ごとに見ながら、軽い保湿剤や塗布量を調整していくことが現実的です。

よくあるご質問(FAQ)

Q1.肌がベタついていても保湿したほうがよいですか?

A.はい、乾燥のサインがあるなら保湿を検討してください。皮脂量と角層水分量は同じではなく、脂性肌でも水分量が低い例が報告されています。
参考文献
Thadanipon K, Kitsongsermthon J. Comparative study into facial sebum level, pore size, and skin hydration between oily-skinned and dry-skinned Thai women. Skin Res Technol. 2020;26(2):163-168.
2026/09/18 出口詩朋子

Q2.乾燥すると皮脂が増えるのですか?

A.必ず増えるとは言えません。「乾燥を補うため皮脂が増える」という因果関係は一般則として確立していません。皮脂は年齢、部位、ホルモン、環境など多くの要因で変化します。
参考文献
Luebberding S, Krueger N, Kerscher M. Age-related changes in skin barrier function – quantitative evaluation of 150 female subjects. Int J Cosmet Sci. 2013;35(2):183-190.
2026/09/18 出口詩朋子

Q3.ベタつく肌にはどんな保湿剤が向いていますか?

A.軽い使用感のローション、ジェル、乳液などから試す方法があります。保湿剤は水分を引き寄せたり蒸散を抑えたりして角層を支えます。部位ごとに量を変えるのも一案です。
参考文献
Draelos ZD. The science behind skin care: Moisturizers. J Cosmet Dermatol. 2018;17(2):138-144.
2026/09/18 出口詩朋子

Q4.保湿をすると皮脂がさらに増えますか?

A.必ずしも増えません。皮脂過多の90人を対象とした4週間の無作為化試験では、保湿クリーム使用中に皮脂量の低下と水分状態の改善が確認されました。ただし特定処方の結果です。
参考文献
Detudom P, Kamanamool N, Paichitrojjana A, Udompataikul P, Udompataikul M. Efficacy of anti-sebum moisturizing cream containing 2% l-carnitine and 5% epigallocatechin gallate in seborrhea: A randomized clinical trial. J Cosmet Dermatol. 2023;22(11):3058-3064.
2026/09/18 出口詩朋子

Q5.ツバメの巣は肌の乾燥に効果がありますか?

A.可能性は研究されていますが、確立とは言えません。2026年の試験では水分量改善が報告された一方、2022年の試験では皮膚水分量にプラセボとの有意差がありませんでした。
参考文献
Zhang W, Wang D, Zhang Y, Wang X, Chen Y, Chen L, et al. Dietary edible bird’s nest improves skin hydration by upregulating EGFR-AQP5 pathway. J Funct Foods. 2026;140:107266.
Kim HM, Lee YM, Kim EH, Eun SW, Sung HK, Ko H, et al. Anti-Wrinkle Efficacy of Edible Bird’s Nest Extract: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Comparative Study. Front Pharmacol. 2022;13:843469.
2026/09/18 出口詩朋子

著者情報

出口 詩朋子(でぐち しほこ)
乾燥肌・シワ研究チーム 研究員
ツバメの巣研究所 研究員
ATHENA株式会社(HESTIAP 美容リサーチャー)

編集方針:研究結果は、ヒト臨床試験・ヒト皮膚研究・動物研究・細胞研究を区別して記載しています。研究で使用された特定の原料・製剤の結果を、別の製品へそのまま当てはめないよう配慮しています。

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